1990年にコペンハーゲンで開催された血流研究に関する会議で、大勢のベテラン科学者が、この代謝活動をどう理解すべきかを議論した。脳の中の、何かが起きている領域に多くの血液が流れる原因はいったい何なのだろうか?この分野の草分けである、アメリカ国立精神衛生研究所のルイス・ソコロフによれば、代謝活動の引き金を引き、それによって血液の需要を招く原因は、神経細胞の機能そのものではないという。代謝を必要とするのは神経細胞が次の仕事に備えて準備をするときなのだそうだ。言い換えれば、血液が必要になるのは脳細胞が果たしている機能ではなく、次の仕事の準備、つまり老廃物を取り除く作業なのだ。「したがって、代謝の活性化は機能的活動と直接かかわりがあるのではなく、その活動の結果からの復旧と結びついているものと思われる」とソコロフは説明した。

マクスウェルの魔物にとって、ほんとうの問題は、分子の位置に関する知識をどうやって得るかではなく、得た知識をどうやって全部取り除くかだったのと、ちょうど同じだ。

血液は、じつはプロセスの途中で捨てられた情報を測る尺度と言える。この代謝がなければ、神経細胞は今行った仕事を忘れることはできない。

脳のエネルギー代謝の研究は、脳が行う仕事に関する研究だ。部屋の家具の配置を思い出すといった心的活動も、まぎれもなく物理的、生理的活動であり、純粋に有形の要素と明確に結びついていることを認識しなくてはならない。思考は体内で起きる物質的な出来事であり、運動のような身体的活動とあらゆる点で似ている。思考を体のほかの活動と分けて考える理由は何もない。テニス同様、思考にも熱量が必要だ。だから、私たちが話すときには頭の中に一種の木があると言うのは、じつに理にかなっている。なにしろ、会話する人の頭では何かが起きていることを、測定して証明できるのだ。
(トール・ノーレットランダーシュ著「ユーザーイリュージョンー意識という幻想」p.153-154 )


脳
















ユーザーイリュージョン―意識という幻想
トール・ノーレットランダーシュ
紀伊國屋書店
2002-09-01



The User Illusion: Cutting Consciousness Down to Size
Tor Norretranders
Penguin Books
1999-06-01



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記事更新日:2022/09/18