日本語の音読みと訓読みは、世界的に見て非常にめずらしいものです。しかし、これは唯一無二のものではなく、古代メソポタミアで話されていたアッカド語にその例があることを日本の言語学者である金田一春彦氏は指摘しています。金田一氏の言葉を以下にそのまま記載します:


日本では「春風」と書いて「ハルカゼ」とも「シュンプウ」とも読むが、韓国では「チュンフォン」と読み、これは中国から韓国へ入った読み方だ。「春」という字は、日本では「シュン」とも読むが、「ハル」とも読む。……(中略)……そしてこの、ハル haru、シュン shun のあいだには全く共通点がない。このような言語体系は現在、日本以外にはどこにも見当たらない、大変めずらしいことである。もっとも今の世界にはほかにないが、歴史をさかのぼってみると、紀元前にはあったという。小アジアで紀元前の昔、シュメール人というすぐれた文化を誇った民族があって、楔形文字という文字を使っていた。その文字をアッカド帝国というところで借りて自分の国語の表記に使ったのがその例である。
(金田一春彦(1988)『日本語 新版(下)』岩波書店より)


アッカド語は古代メソポタミアの言語で、紀元前3000年半ばから紀元前1世紀までの史料が現存しています。このアッカド語にも、自国での読みと外国語での読みという二つの読み方があったということです。同じ言葉で違う読み方をするという日本語の表記法に見られる特徴が、日本語だけの特殊なものではなく、何か普遍的な文脈を持つ可能性があります。金田一氏が、日本語と同じような傾向性のあるアッカド語について言及しているのは興味深いことです。


シュメール人



NLP共同創始者ジョン・グリンダー博士認定校
ニューコードNLPスクール
ロゴマーク








記事更新日:2024/03/20