アメリカの哲学者で心理学の父とも呼ばれているウィリアム・ジェームズはある日、ハーバード大学に招待され、自ら選んだテーマについて講演しました。それは大学の関係者だけでなく誰でも参加できる特別講演でした。ジェームズはその講演に「神の存在は証明できるか?」という大胆なタイトルをつけました。このタイトルは、20世紀初頭のニューイングランド地域において、人々の眉をひそめさせることが確実なものでした。

ウィリアム・ジェームズ
(William James, 1842-1910)
ウィリアム・ジェームズ


講演会の当日、ジェームズは、会場に聴衆が入ってくるのをいくらかの心の動揺を覚えながら見守っていました。そして客席がほぼ埋まった頃、最後に小柄な老女が中央の通路を駆けてきて、最前列の真ん中に座りました。

講演会が始まると、ジェームズはいつものように機知に富んだ魅力的な話法で「神の存在は証明できるか?」というテーマについて語りました。そして講演が進むなか、さきほどの最前列に座った老女が自分の話を深く聞き入っている姿が目に留まりました。彼女は誰も笑っていないときに笑っているようでしたが、ジェームズはすべてうまくいっているように思いました。

講演は聴衆にとても好意的に受け入れられ、無事終了しました。演壇のまわりにはジェームズに挨拶しようとたくさんの人の列ができ、その列の最後にはあの小柄な老女がいました。老女は自分の順番がくると、ジェームズに明るい表情で見上げながら次のように言いました。

「ジェームズ博士、私は先生の講演を心から楽しむことができました。しかしひとつ質問があります」

ジェームズは、「ええ、どうぞ、質問してください」と丁寧に返しました。

すると老女は目を輝かせて次のように言いました。

「ええっとですね、ジェームズ博士、もし神がいないとしたら、何が地球が下に落ちるのを防いでいるのですか?」

ジェームズはその質問に即座に回答しようと、求心力や重力体系といった概念を頭に浮かべました。しかしそれらの回答をやめて、この女性から自分が何かを学べるように回答することにしました。

「あなたのご質問に答えたいとは思うのですが、その前に、あなた自身は、何が地球が下に落ちるのを防いでいると信じているか教えていただけますか?」

すると老女は答えました。
「ジェームズ博士、答えは簡単です。地球は大きな亀の背中に乗っているのです」

ジェームズ博士は、彼女の言葉についてしばらく考えた後、勝ち誇ったような声で次の質問をしました。

「それでは、どうか教えてください。何がその大きな亀が下に落ちるのを防いでいるのですか?」

老女は答えました。
「ジェームズ博士、そうではありません。きりがないのです。下に向かってどんどん無数の亀が重なっているのです!」


亀


〈資料〉
Wikipedia: Turtles all the way down
無限後退(Infinite regress)


ニューコードNLPの原点 個人的な天才になるための必要条件

ジョン・グリンダー&ジュディス・ディロージャ共著
北岡泰典訳
メディアート出版
2006-06-20
(p.12-13より)




Turtles All the Way Down: Prerequisites to Personal Genius
John Grinder
Judith Delozier
Grinder Delozier & Associates
1995-09-01



NLP共同創始者ジョン・グリンダー博士認定校
ニューコードNLPスクール
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記事更新日:2025/12/08