New Code NLP School

NLP共同創始者ジョン・グリンダー博士、ニューコードNLP共同開発者カルメン・ボスティック女史が監修するニューコードNLPスクールの公式ブログです。

2021年02月

バリ島の知のコスモロジー(4)人間の脳に宿る明示知と暗黙知

このページは、ひとつ前のページ「バリ島の知のコスモロジー(3)超感覚を錬磨する」の続きです。

バリ島の知のコスモロジー(3)超感覚を錬磨する


西洋文化では、実在するものと認められるものとして、意識(知覚できるものがベースとなった心の動き)、および延長(計測できるものとその空間的な拡がり)の二つを重視し、それ以外のものには感心を払わないようにしてきました。そして意識できるものと延長されるものは、言語、数式、楽譜などの記号(特定の分節構造に変換できる事象)として記録され、情報が固定化されることで客観的な存在となり、論理的な操作ができるものとして発展していきました。

このような言語脳モジュールの働きは、バリ島でいうスカラ(明示知)の領域のほんの一部に過ぎません。この機能は人間の脳内で発達したものであり、自然界において普遍的に連続性をもつ概念やイメージなどを離散化(デジタル化)させ、明確に区別できる概念およびその配列の形成を含む分節構造を生成および組織化し、それらを組み換えて利用しています。


人間の脳に宿る明示知と暗黙知

暗黙知と明示知


このような西洋文化における明示知の世界は、脳の非言語性機能の働きを無視し、言語性機能のモジュールにすべてを託そうとすること、つまり実体と異なる脳機能の自己認識と事実上一体化させてしまうものです。これは、私たち人類が何億年という悠久の時を経て蓄積してきた自然界に存在する連続性や流動性を本質とする暗黙知のみならず、明晰判断な姿をもたないだけでそれ自体の存在意義と価値を確かにしつつも、少なくとも明晰判断知と比較することもできないほど巨大な明示知全体の世界を旅するパスポートさえ破棄したことを意味します。


南国の海



このブログ記事では、大橋力著「ハイパーソニック・エフェクト」p.509-511を参考とさせていただきました。
ハイパーソニック・エフェクト
大橋力
岩波書店
2017-09-23



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記事更新日:2024/06/19

バリ島の知のコスモロジー(3)超感覚を錬磨する

このページは、ひとつ前のページ「バリ島の知のコスモロジー(2)口伝えと文字化の違い」の続きです。

バリ島の知のコスモロジー(2)口伝えと文字化の違い


バリ島には、アウィグ・アウィグ(awig-awig)と呼ばれる伝統的な決まり事があります。アウィグ・アウィグとは、共同体の約束事を、いっさい文字や書式にせず、口伝えという可視化しない流動性のあるもの、つまり非確定的な方法で行っていく方法です。

バリ島の人々の伝統的な智恵においては、共同体をまとめるものとして、人々を縛る掟のようなものや確定的に固定された文書は適切に機能せず、流動的な口伝え(申し合わせ)の方がより適切に機能すると認識されています。その方が、臨機応変、融通無碍、阿吽(あうん)の呼吸、以心伝心というような暗黙知的な回路がより効果的に機能すると信じられているのです。そのためには、かすかな気配、はっきりとは知覚できないもの、あるかないかの境目、はっきり決まらない世界などといったものを察知できること、つまりニスカラ(暗黙知)をしっかり捉えることが重視されるのです。

バリ語には、舞踊や音楽の芸の精妙さを表現する〈タクスー〉(taksu)という言葉があります。それは、言葉にすることのできないほどの精妙さを意味しします。明示知の領域の外側に存在するものを表現する言葉があることは驚きですが、そういった目に見えないものを透視する直感、あるいは何かを察知するという感覚の錬磨とその歴史的蓄積が、聴こえない超高周波の働きやその体表面からの受容という仕組みまでも視野におさめたバリ島の伝統知という脳機能体系の底力といえるでしょう。


バリ島・ガムランの楽器
バリ島



このブログ記事では、大橋力著「ハイパーソニック・エフェクト」p.499を参考とさせていただきました。
ハイパーソニック・エフェクト
大橋力
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記事更新日:2024/06/19

バリ島の知のコスモロジー(2)口伝えと文字化の違い

このページは、ひとつ前のページ「バリ島の知のコスモロジー(1)スカラとニスカラ」の続きです。

バリ島の知のコスモロジー(1)スカラとニスカラ


知のコスモロジーが伝統的に定着しているバリ島の人々は、普段から、ニスカラ(知覚を超越した領域)の存在を念頭において生きています。そしてこれを基本的スタンスとしてバリ島の社会全体に共有されることで、ニスカラという耳では聴こえない超高周波が引き起こす基幹脳の活性化を的確に捉え、文化の中で活用していると考えられます。

※基幹脳の活性化についてはこちらをご参照ください:
ハイパーソニック・エフェクトとは何か(芸能山城組)


こうしたバリ島の伝統知の中で、ニスカラ(暗黙知)によってスカラ(明示知)を制御可能にし、その有効性を高めているひとつの例を挙げます。バリ島の社会を構成しているいくつかの共同体、たとえば自己完結的な地域社会集団であるデサ(村)や、水田農耕用水の分配を司るスバック(水利組合)などには、アウィグ・アウィグ(awig-awig)と呼ばれる伝統的な決まり事があります。アウィグ・アウィグとは、共同体の約束事を、いっさい文字や書式にせず、口伝えという可視化しない流動性のあるもの、つまり非確定的な方法で行っていく方法です。

第二次世界大戦後、バリ島にも国際化や近代化の波が押し寄せ、国家や州政府レベルの機関から、各共同体に向けて、アウィグ・アウィグの文書化(明示化)が繰り返し要請されてきました。しかし村によっては、形ばかりの仮の文書化は行っても、実際は昔と変わらず口伝えの方法が取られてきました。

このように、共同体の決まり事を文字や文章で固定化しないことにより、ニスカラ(目に見えない領域のもの、知覚を超越したもの)を取り入れやすく、そういった領域のものが農業や共同体の人々をまとめるのにどれほど有効かは、実際に農業用水の分配を巡って利害が対立しやすい場面でも信じられないほど協調性を生み出したり、その土地の平和がうまく保たれていることから証明されています。


秋の田畑


このブログ記事では、大橋力著「ハイパーソニック・エフェクト」p.497を参考とさせていただきました。
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記事更新日:2024/06/18

バリ島の知のコスモロジー(1)スカラとニスカラ

ガムラン楽器


バリ島の社会に見られる超高周波を含む音に対する認識、あるいは活用において、その重要な要素となるのは、知覚できず意識で捉えることができない空気の振動です。こうした耳では聴こえない超高周波の存在と働きをバリ島の人々は古くから熟知し、音楽を美しく心地よく感じさせるため、さらには人間の意識を変容させるため、かなり自在に駆使してきたと思われます。

私は、バリ島の人々が示すこうした不思議な領域での活性についてより深く知ろうと模索する過程で、バリ島の社会を支える〈伝統知〉のプラットフォーム上でそうした知覚できない事象が実在として認識されていることを知りました。それは、バリ島における知のコスモロジーを形成しているスカラ(Sekala)とニスカラ(Niskala)という概念です。

スカラ(Selala)とは、目に見えるものという意味の言葉が転じて、知覚できるものや意識で捉えることができる顕在的なものを指します。ニスカラ(Nislara)とは、目に見えないものという意味の言葉が転じて、知覚できないものや意識で捉えることができない潜在的なものを指します。バリ島の社会では、スカラとニスカラの二つが一体となった二元的なコスモスが存在し、スカラが現実を、ニスカラが神々を象徴し、時と場合によってスカラが優越したりニスカラが優越したりします。

たとえば古代ギリシアにおいてアリストテレスが提唱したロゴス(論理)、エトス(信頼)、パトス(情熱)という知のコスモロジーは、そのすべてがスカラのカテゴリーに属するものでありニスカラを含みません。また、近代になって、そうした知覚できないものや意識で捉えることができない潜在的なものを知らないことへの限界に注目した物理学者のマイケル・ポラニーが、暗黙知(Tacit Knowledge)と明示知(Explicit Knowledge)という二つの相対する概念を提唱しています。ただし、マイケル・ポラニーのいう暗黙知とは、ポラニー自身が述べている通り知覚の範疇に入るもので、暗黙知と明示知の両方がスカラのカテゴリーに属します。


暗黙知と明示知の関係を氷山になぞらえた図
暗黙知と明示知



このブログ記事では、大橋力著「ハイパーソニック・エフェクト」p.495-497を参考とさせていただきました。
ハイパーソニック・エフェクト
大橋力
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2017-09-23



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記事更新日:2024/06/17

暗黙知という概念の核心にあるもの

暗黙知という概念の核心にあるのは、技能ーたとえば職人の技ーには言葉で表現しうる以上の知識が含まれている、という考え方だ。植物を育てる才能は説明書では伝えられるものではない。土にまみれて初めて獲得できる(それでも獲得できない人もいるが)。日常生活には、このような例が数えきれないほどある。
(トール・ノーレットランダーシュ著「ユーザーイリュージョンー意識という幻想」p.367)

ガーデニング













The vital aspect of the idea of tacit knowledge is that a skillーfor example, that of a craftmanーcontains more knowledge than can be described. “Green thumb”(having a way with plants)cannot be conveyed by a description: You can acquire green thumbs only by getting them dirty(and some of us never acquire them). Everyday life contains countless examples like this, 
(Tor Norretranders “The User Illusion: Cutting Consciousness Down to Size”p.300-301)


ユーザーイリュージョン―意識という幻想
トール・ノーレットランダーシュ
紀伊國屋書店
2002-09-01



The User Illusion: Cutting Consciousness Down to Size
Tor Norretranders
Penguin Books
1999-06-01



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記事更新日:2022/09/29

暗黙知と明示知について(目次)

ニューコードNLPスクールのブログで、「暗黙知」について書いた記事の一覧です。

暗黙知について(目次)
2021/02/01 暗黙知について(目次)


西洋モデルとしての暗黙知

2021/02/02 暗黙知という概念の核心にあるもの


東洋モデルとしての暗黙知
2021/02/03 バリ島の知のコスモロジー(1)スカラとニスカラ
2021/02/04 バリ島の知のコスモロジー(2)口伝えと文字化
2021/02/05 バリ島の知のコスモロジー(3)超感覚を錬磨する
2021/02/06 バリ島の知のコスモロジー(4)人間の脳に宿る明示知と暗黙知


ソムリエ














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記事更新日:2024/06/20
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