New Code NLP School

NLP共同創始者ジョン・グリンダー博士、ニューコードNLP共同開発者カルメン・ボスティック女史が監修するニューコードNLPスクールの公式ブログです。

2017年10月

じゃんけんとラポールの関係

じゃんけんとは、グー、チョキ、パーという三種類の指の出し方で勝敗を決める日本の遊びです。じゃんけんは通常、勝敗を決めるだけではなく、複数人の中で一人または特定の人数を選出したり、何かの順番を決めたりするときに使います。


(1)じゃんけんで使う3種類の指の出し方

◎グー
 ・手の指をすべて折り畳んだもの。
 ・石を意味する。

◎チョキ
 ・手の指を二本だけ立てたもの。
 ・ハサミを意味する。

◎パー
 ・手の指をすべて広げたもの。
 ・紙を意味する。



(2)じゃんけんのルール

◎グーはチョキに勝ちます。
 ⇒石はハサミで切ることはできません。

◎チョキはパーに勝ちます。
 ⇒ハサミは紙を切ることができます。

◎パーはグーに勝ちます。
 ⇒紙は石を包むことができます。


じゃんけん




(3)じゃんけんの方法


じゃんけんは2人以上で行います。まず最初に声の高さとリズムを合わせて「じゃん、けん、ぽん!」という掛け声を発し、最後の「ぽん!」の掛け声に合わせてグー、チョキ、パーの中の1つの手の形を出し合い、出た手の形で勝敗を決めます。


じゃんけん



同じ手の形が出たときは引き分けとなり、同じ手の形を出した者同士がふたたび、声の高さとリズムを合わせて「あいこで、しょ!」という掛け声を発し、最後の「しょ!」の掛け声に合わせてグー、チョキ、パーの中の1つの手の形を出し合い、出た手の形で勝敗を決めます。そして勝敗が完全に決まるまでこれを続けます。

※じゃんけんを始める際に「さいしょはグー」という掛け声を使うことがあります。
※地域によって掛け声が異なる場合があります。



(4)じゃんけんとラポールの関係
◎「じゃんけん、ぽん」という掛け声(声の高さ、速度、リズムなど)が無意識に一致していくる。これはミラーニューロンの働きによるもので、場の雰囲気を感じ取る要素となっている。

◎じゃんけんの参加者が、無意識に同じ手の形を出すことがある。これもミラーニューロンの働きによるものである。

相手が出しそうな手の形を無意識に感じ取ることがあり、これもミラーニューロンが働きによるものである。

◎『次はこの手の形を出す』という意思を暗示させて実際は違う手の形を出したりと、瞬間瞬間で、自分の戦略を相手に匂わせることができる。


じゃんけんぽん



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記事更新日:2024/07/18

Hideo Kobayashi and a Firefly

Hideo Kobayashi (1902-1983), a Japanese literary critic and author, begins his unfinished work on the French philosopher Henri Bergson as follows:

-----------------------

A few days after my mother passed away, I had a weird experience. Back then I didn’t want to tell anybody about it, and in fact I never did. But I couldn’t bear this strange feeling and I once decided to write about it under the title I came up with, A Fairy Tale Experience, though it never happened. Now finally, I will simply describe what really happened that day. Having noticed that there was no more candle offering for hotoke (the deceased spirit), I went out to get some. My family lived in the deep forest of Ogigayatsu, and there was a creek running in front of our house. It was already dark outside. I walked through the gate, and saw a firefly flickering. Every year we see many of them, but it was the first one I ever saw that year. I had never seen such a big one, and one that glowed so beautifully. Just then an idea occurred to me; “My mother has just appeared before me as a firefly.” Following the glow in the air, I couldn’t shake off that feeling any more. My readers, I assume, could just laugh away my sentiment, and I can do that too. But here is the rub――to tell you the truth, I haven’t described what really happened yet. That moment I never thought, “Oh this is the first firefly I ever saw this year” nor “This one glows like I have never seen.” Only after a while did I reflect upon that experience once or twice, but that day I swear I didn’t. In fact, I didn’t even think that my mother somehow turned into the firefly. Everything just seemed to be natural. So if I were to simply describe what really happened as it happened, it should be something like, “I walked through the gate, and saw my mother/firefly flickering.” In other words, I would have to write a fairy tale. Hence the title, A Fairy Tale Experience.

(Complete Works of Hideo Kobayashi, Supplementary Volume. 1, p.11-12)

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Henri Bergson was a philosopher who sought to understand the relationship between our physical brain and our mind. In writing on Bergson, perhaps Hideo Kobayashi couldn’t help but mention his own experience; he saw a firefly and naturally thought it was his deceased mother, a story that points to our mysterious natureAnd this could have something to do with a sensory modality that we share as a human race. 

蛍



小林秀雄と蛍

日本の文芸評論家で作家の小林秀雄(1902-1983)は、フランスの哲学者、アンリ・ベルグソンの思想を論じた未完の評論「感想」を、次のように書き始めています。

-----------------------

母が死んだ数日後の或る日、妙な経験をした。誰にも話したくはなかつたし、話したことはない。尤も、妙な気分が続いてやり切れず、「或る童話的経験」という題を思い附いて、よほど書いてみようと考えた事はある。今は、ただ、簡単に事実を記する。仏に上げる蝋燭を切らしたのに気附き、買いに出かけた。私の家は、扇ヶ谷の奥にあって、家の前の道に添うて小川が流れていた。もう夕暮れであった。門を出ると、行手に蛍が一匹飛んでいるのを見た。この辺りには、毎年蛍をよく見掛けるのだが、その年は初めて見る蛍だった。今まで見たこともない様な大ぶりのもので、見事に光っていた。おっかさんは、今は蛍になっている、と私はふと思った。蛍の飛ぶ後を歩きながら、私は、もうその考えから逃れることが出来なかった。ところで、無論、読者は、私の感傷を一笑に附する事が出来るのだが、そんな事なら、私自身にも出来る事なのである。だが、困ったことがある。実を言えば、私は事実を少しも正確に書いていないのである。私は、その時、これは今年初めて見る蛍だとか、普通とは異って実によく光るとか、そんな事を少しも考えはしなかった。私は、後になって、幾度か反省してみたが、その時の私には、反省的な心の動きは少しもなかった。おっかさんが蛍になったとさえ考えはしなかった。何も彼(か)も当り前であった。従って、当り前だった事を当り前に正直に書けば、門を出ると、おっかさんという蛍が飛んでいた、と書くことになる。つまり、童話を書くことになる。後になって、私が、「或る童話的経験」という題を思い附いた所以である。

小林秀雄全作品 別巻1』p.11-12)

-----------------------------

アンリ・ベルグソンは、物質である脳と、私たちの心がどのような関係にあるかを探究した哲学者です。小林秀雄は、このベルグソン論の冒頭で、蛍を見てそれを自分の亡くなった母親だと思ってしまうような、人間の不思議さを想起させるエピソードに触れたのかも知れません。これも私たち人間の感覚モダリティのひとつかもしれません。

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記事投稿日:2024/07/17

小林秀雄と蛍

日本の文芸評論家で作家の小林秀雄(1902-1983)は、フランスの哲学者、アンリ・ベルグソンの思想を論じた未完の評論「感想」を、次のように書き始めています。

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母が死んだ数日後の或る日、妙な経験をした。誰にも話したくはなかつたし、話したことはない。尤も、妙な気分が続いてやり切れず、「或る童話的経験」という題を思い附いて、よほど書いてみようと考えた事はある。今は、ただ、簡単に事実を記する。仏に上げる蝋燭を切らしたのに気附き、買いに出かけた。私の家は、扇ヶ谷の奥にあって、家の前の道に添うて小川が流れていた。もう夕暮れであった。門を出ると、行手に蛍が一匹飛んでいるのを見た。この辺りには、毎年蛍をよく見掛けるのだが、その年は初めて見る蛍だった。今まで見たこともない様な大ぶりのもので、見事に光っていた。おっかさんは、今は蛍になっている、と私はふと思った。蛍の飛ぶ後を歩きながら、私は、もうその考えから逃れることが出来なかった。ところで、無論、読者は、私の感傷を一笑に附する事が出来るのだが、そんな事なら、私自身にも出来る事なのである。だが、困ったことがある。実を言えば、私は事実を少しも正確に書いていないのである。私は、その時、これは今年初めて見る蛍だとか、普通とは異って実によく光るとか、そんな事を少しも考えはしなかった。私は、後になって、幾度か反省してみたが、その時の私には、反省的な心の動きは少しもなかった。おっかさんが蛍になったとさえ考えはしなかった。何も彼(か)も当り前であった。従って、当り前だった事を当り前に正直に書けば、門を出ると、おっかさんという蛍が飛んでいた、と書くことになる。つまり、童話を書くことになる。後になって、私が、「或る童話的経験」という題を思い附いた所以である。

小林秀雄全作品 別巻1p.11-12

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アンリ・ベルグソンは、物質である脳と、私たちの心がどのような関係にあるかを探究した哲学者です。小林秀雄は、このベルグソン論の冒頭で、蛍を見てそれを自分の亡くなった母親だと思ってしまうような、人間の不思議さを想起させるエピソードに触れたのかも知れません。これも私たち人間の感覚モダリティのひとつかもしれません。


蛍



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記事投稿日:2024/07/17

About the word “Ma”

In Japan, there is a word “Ma”. One of its meanings is “between something and something”, in other words, “interval” in English. Furthermore, this “Ma” is generally divided into two types.

 

What one type means is intervals in time or in space, in which, like pause in time or gap in space, nothing exists or which has no meanings. Break and blank also represent this meaning plainly.

 

On the other hand, another type’s “Ma” shows that, although there is actually nothing in space or time, a vast and deep universe is just there. What it expresses is a sense that some elements, including itself, invade empty time and space, making them meaningful.

 

[References]

Akikazu Nakamura, Harmonic Tone:A cultural Note of Sound, Language and Body, Shunjusha, November 1, 2010, p133 


和室


倍音 音・ことば・身体の文化誌
中村 明一
春秋社
2010-11-01



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記事更新日:2024/07/17

日本語の間(ま)という言葉について

日本には、「間」(ま)という言葉があります。

英語でいえばインターバル、何かと何かの間(あいだ)、つまりは間隔です。その定義は、大きく二つのタイプに分けられます。

一つは、時間の間隔、および空間の間隔です。タイミング、あるいはスペースといってもよいでしょう。その間(あいだ)に何も存在しない、意味を持たないもの。たんなるブレイク、ブランクという意味です。

もう一つは、何もないように見えて、実はそこにこそ広く深い宇宙がある、ということを表すための間(ま)です。それは、時間、空間に、それ自身を含め、他の要素が浸食し、時間、空間が歪んでいる感覚です。
(中村明一著「倍音 音・ことば・身体の文化誌」p.133より)



和室


倍音 音・ことば・身体の文化誌
中村 明一
春秋社
2010-11-01



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記事更新日:2024/07/17

左右の鼻孔による呼吸

D. ワーンツ(Debra Wernts)は、この大脳半球での優位性に影響しているウルトレイディアン・リズムが、〔左右鼻孔の〕鼻呼吸の同様な交代と、左右逆のかたちで結びついていることを発見した(Werntz, 1981)。すなわち左の鼻孔が開いて空気を取り入れている時、右脳の活発な活動を示す脳波が現れ、その逆も同様だったのである。さらに研究を続けたワーンツは、呼吸を左右の鼻孔の間で変化させると、左右大脳半球の優位性も変わることを発見した!(Werntzほか, 1981)。鼻呼吸のリズムは、大脳半球の活動にとって、ただ開かれているだけの窓ではなく、左右鼻孔間の空気の流れを意図的に変えることで、脳と心の最も高いレベルにある右脳と左脳の活動を変化させることができるのである! 彼女らは、この関係を自律神経系と結び付けて、次のように説明している(Werntzほか, 1981, pp.4-6)。

私たちは、鼻呼吸のサイクルと大脳半球の活動交代との相互関係は、ウルトレイディアン・リズムにもとづく一つの振動システムのモデルによるものと考え、神経系の理解に新しい概念を打ち立てた。(中略)私たちがここで提案するのは、あらゆるウルトレイディアン・リズムと、自律神経系によるそれらのリズムの調整とをひとつにまとめる−具体的には自律神経系と左右大脳半球の活動を統合する−より完全で総合的な理論の枠組みである。ここで間違いなく言えるのは、左脳と右脳のそれぞれに局在する「別個のかたちの知性」は、その作用の全般的な傾向から見ても、脳とは左右逆の半身の代謝の活性化を必要とするということだ。そう考えれば、鼻呼吸の左右交代のサイクルは、この理論を考察するにあたり、測定が容易な指標、あるいは「窓」のようなものとみなすことができる。(中略)したがって身体は、休息と活動、すなわち副交感神経支配と交感神経支配の間での周期交代をしながら、同時に「左半身−右脳」と「右半身−左脳」の交代を経験しているのである。そしてこれが、瞳孔の開き具合からより高次の大脳の皮質の機能や反応にいたるまでの、人間のあらゆる組織レベルでのウルトレイディアン・リズムを作り出すのである。(中略)重要なのは、これが自律神経系と大脳皮質の活動の包括的な統合という、これまで定義も研究もされていない関係を意味しているということである。鼻呼吸の周期は、何らかの中央制御のメカニズム、おそらくは交感神経と副交感神経のバランスを変化させる視床下部の働きによって調整されていると思われるので、この交代は脳を含む全身で起こり、そのしくみは、血管運動の強弱が脳血管の血流を調節し、それによって大脳半球の活動を変化させることによるものであることを、私たちは仮説として提示したい。

何千年にもわたり東洋のヨーガ行者たちは、彼らのいう「プラーナヤマ」(呼吸法)を実践して呼吸を調整し、それによって意識状態を調整できると主張してきた(Rossi, 1985, 1986a)。また彼らは、身体生理への奇跡的コントロールとされるものは、呼吸リズムの意識的調整と関連するものだと主張してきた。このような心身コントロールの達人技は、おもに自律神経系にかかわるものだから、ワーンツの研究は、古代からのヨーガの伝統への理論的、実証的な架け橋となるかもしれない。

ヨガ










この鼻呼吸サイクルの交代と関連がありそうな、現在なら多重人格と呼ぶであろう特に劇的な二つの症例を、N. イショロンスキーがかつて報告している(Ischolondsky, 1955, pp.8-9)。どちらの症例も、活動的な人格と受動的な人格の間には記憶喪失がみられた。これは自律神経系における交換神経と副交感神経の優位性が鼻呼吸サイクルにともなって交代し、強烈な人格変化をもたらした明白な例である。

(中略)二つの正反対の人格。一方は衝動的で無責任で意地が悪く、執念深くて、権威への反抗心と周囲の人間への憎しみに満ちていた。この人格の時の患者は極端に攻撃的で、悪態をつき、州立病院のこと、性関係のことなどでおぞましい話をしては他の患者たちを震えあがらせていた。この第一の人格に突然とって代わる正反対の行動パターンになると、患者は依存的、従順、内気、控えめで、やさしく素直にみえた。前にはののしり、悪態をついた同じ人間に対し、非常におずおずと親しみを表現し、好意と受容を求めるのだった。不穏当な言葉や表情は跡形もなく、周囲に敬意を示すこともなく、セックスになどは毛ほども触れなかった。実際、セックスのことを考えたり、関係のある言葉を聞くだけで、魂の破滅に対する極端な恐怖、罪と不安の念、憂うつ、恥の感情が起こるようだった。(中略)検査の結果、彼女の右半身と左半身で感覚刺激に対する反応に違いがあったことがわかった。右半身の感覚は鈍く、左半身は極端に敏感なのである。たとえば視覚、聴覚は右半身では不鮮明で遠く感じるのに対し、左半身では鮮明に、近く感じるのだった。触覚や痛みに対する反応は、右半身では高い閾値を示し、左半身は低かった。特徴的だったのは、嗅覚の対照的な状態である。右側は臭いに対し非常に敏感で、右の鼻孔はよく通っており、一方左側は臭いを感じず、鼻孔は詰まって閉じていた。瞳孔の開き具合、反射、唾液の分泌、発汗などその他の神経学的兆候にも、からだの左右で同様の反応の違いが認められた。攻撃的人格は、右半身で小さい瞳孔、少ない唾液分泌、足の裏と手のひらの無発汗、腹壁反射の欠如を示し、左半身では瞳孔拡大、唾液の過剰分泌、足の裏と手のひらの発汗、そして非常に強い腹壁反射を示したのである(瞳孔の大きさなどの観察結果を、鼻の詰まりと無関係に説明するのは困難である)。そして精神状態が内気、控えめでやさしい人格に切り替わったとたん、神経学的兆候もすべて反対側が優勢となり、嗅覚は今度は左が非常に鋭敏になったのに対し、右は完全に失われ、鼻孔も詰まって閉じてしまった。

カリフォルニア州ラ・ホーヤにあるジョナス・ソーク研究所のD. シャナコフーカルサは、自律神経系に関連するいかなる心身の状態あるいは心身障害の研究も、鼻呼吸リズムを利用して左右大脳半球の優位性を切り替えることによって、安全かつ容易に行うことができると述べている(Shannahoff-Khalsa, 1991)。私も以前、このやり方で左右大脳半球の優位性を切り替える方法を、いくつか詳しく解説したことがある(Rossi, 1986a, b)。私が好む方法は、ただ身体のどちらかの側を上にしてゆったりと横になるというものである。例えば、右を下にして横になると右の鼻孔が詰まってきて、反対に左の鼻孔は2, 3分のうちに通りがよくなる。そしてそれにともなって、右脳の反応が高まる傾向があるのだ。左側を下にすれば左脳が活発になる。

催眠と精神生物学的なリズムとの関係を追求する近年の研究でもっとも興味深い分野が、この鼻呼吸と脳の関係である。ドイツの鼻科学者R.カイザーは、空気が左の鼻腔と右の鼻腔から吸入される度合いが大きく変わるウルトレイディアン・リズム的な変化に気づき、これを測定した功績で知られている(Kayer, 1895)。人間の場合、数時間ごとに左右の鼻腔はその大きさと形が切り替わり、通る空気の流れを変える。ワーンツは、大脳半球の活動(脳波)と鼻呼吸周期のウルトレイディアン・リズムの左右逆の関係を報告している(Werntz, 1981)。彼女は右脳の脳波が全体としてかなりの部分をしめることと、左の鼻孔での呼気支配との間に正の相関関係があり、左脳はそれと対称的であることを発見した。広範な研究を行ったワーンツらは、1つの鼻孔を閉じて強制的にもう一方の鼻孔で呼吸させることで、鼻呼吸の優位性は意図的に交代させられるとの結論を得た(Werntzほか, 1982a, b)。さらにこの鼻呼吸の優位性の交代は、鼻孔とは左右逆の左右大脳半球の優位性の切り替え、および全身の自律神経系のバランスの切り替えとつながっていたのである(Shannahoff-Khalsa, 1991)。ウルトレイディアン・リズムにもとづく鼻呼吸のサイクルは、大脳半球の活動指標となるばかりではなく、身体のほとんどの器官系、組織、細胞とのコミュニケーションを行うサイバネティック・ループにかかわる脳の高次中枢と自律神経系の活動の場を、意図的に変える手段として利用できるのだ。この鼻−脳−心のつながりが、東洋の達人たちが行う、ヨーガ古来の呼吸調整によって多くの自律神経系機能の随意的なコントロールをもたらす、本質的な経路だろうと推測する研究者もいる(Brown, 1991a, b; Rossi, 1990b, 1991)

最近発表されたD. オソーヴィエッツの博士論文は、この関係に触発されたものである(Osowiec, 1992)。彼女は鼻呼吸のウルトレイディアンリズムと、不安、ストレス症状、および人格の自己実現プロセスとの間には関係があるという仮説を検討した。そして、「(1)不安やストレス症状の傾向が低い自己実現タイプの人と、正常な鼻呼吸サイクルとは著しい正の相関関係があること、(2)不安やストレス症状の傾向が高い非自己実現タイプの人は、鼻呼吸サイクルに著しい不規則性が見られること」を発見した。この結果は、不規則な鼻呼吸サイクルは、とくに一方の鼻孔だけが極端に長期間詰まっている場合、病気や精神障害につながると強調した古い医学の教科書を思い起こさせる(Rama, Ballentine & Ajaya, 1976)。

最近行われた十二週間の追跡調査で、オソーヴィエッツは、催眠誘導しやすい被験者は自己催眠を行うと鼻呼吸のウルトレイディアン・リズムに高い規則性を示すが、催眠誘導しにくい被験者はそうでないこおを立証しつつあるということだ(私的通信、1993)。彼女はウルトレイディアン・リズムにもとづく鼻呼吸のサイクルについてのこの発見は、ストレス、症状、人格、催眠療法への反応性の間に見られる全般的な関係と軌を一にするという仮説を立てている。

催眠と鼻呼吸−脳との間につながりがあるという仮説をさらに検証するため、B. リッピンコットは二種類の催眠誘導の効果を調べた(Lippincott, 1992c)。すなわち、(1)「ハーバード催眠感受性集団尺度」(The Harvard Group Scale of Hypnotic Susceptibility: HGSHS)を用いる伝統的催眠と、(2)鼻呼吸リズムに従い、私の「ウルトレイディアン・アクセス法」を用いる自然主義的な催眠法である。彼は、催眠が左右大脳半球の優位性の交代と関係があるのなら(Ericksin & Rossi, 1979)、催眠誘導は鼻呼吸における左右の優位性とも関係があるのではないかという仮説を立てた。そして、どちらの催眠法を用いた被験者も、催眠導入をしていない対照群と比べると、鼻呼吸での左右鼻孔の交代をより多く行うこと、さらに自然主義的な催眠誘導のグループの方が、伝統的な催眠誘導グループより鼻呼吸の交代が著しく多いことを確認したのである。

〔指標12〕に記した簡単な方法で予備調査をしたところ、非常に興味深い結果が得られた。たとえば、単なるストレスや過労による機能性の頭痛は、ただ鼻呼吸のリズムを一方の鼻孔から他方へと変えるだけで、比較的速やかにその強さと部位が変わったのである。何人かの患者は、鼻呼吸の左右の優位性を変えることで、頭痛を心地よい暖かさや涼しさなどに、観念力学的に変えることができると報告した。不機嫌、不快感、身体的な不調は、この方法で5, 6分間の感覚の変換を試みていくと、より意義深い気づきとともにイメージや実感にのぼってくる。他の文献では、ウルトレイディアン・リズムにおける休息期に大脳半球を右脳優位に変えることで、「明晰夢遊状態」(Lucid somnambulism)という深い自己催眠状態にアクセスした体験をいくつか発表したことがある(Rossi, 1972/1985)。

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〔指標12〕左脳大脳半球の優位性の交代と心身の状態

1.鼻呼吸での左右鼻孔の優位性と心身の状態を判断する
「今あなたが経験している心身の状態を探究し、それを変えていきたいと思われるのなら、まず左右どちらの鼻孔が通っているか確かめて下さい」

2.鼻と大脳半球の左右の優位性を交代させる
「通っている鼻孔のほうが下になるようなかたちで、横向きに寝て下さい。これによって、数分のうちに、あなたの大脳半球の優位性が下になっているほうに移ります。次の5分から20分のあいだは、感覚、知覚、情動、認知、あるいは症状などが自然に変化するのをただ受け止め、不思議さを感じていて下さい」

3.左右大脳半球の優位性の変化と、心身の状態の切り替わりを確認する
「まっすぐ座った状態で、前は詰まっていた鼻孔は今は通っていること、そしてこんどは反対側が詰まっていることに注意して下さい。こうして鼻と大脳半球での優位性が交代したときの、心身の状態の変化を覚えておいて下さい。そして自分の反応の特徴的なパターンを調べ、これからの指針にして下さい」

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U. アルヤ博士はその著作「瞑想と死の技法」(Meditation and the Art of Dying)(Arya, 1979)に、鼻呼吸のサイクル、性的オルガスム、および「サマディー」(瞑想の最高の境地。三昧)との興味深い関係を記している。それによると、古いヨーガの文献では、性的オルガスムや「サマディー」での最も深い瞑想状態の間は、両方の鼻孔が開くとされている。博士は、この種の瞑想におけるエクスタシーは、「クンダリーニ〔訳注・蛇の姿で象徴的にあらわされる生命エネルギー〕の急上昇によるもので(中略)、禁欲は容易となり、性行為より大きな歓びをもたらす」と述べている。この観察報告を検証するのは、西洋科学の役目であろう。

自律神経系、左右大脳半球の優位性、行動の関係についての以上のような予備研究は、催眠療法、心身相関的な治癒、人間の潜在能力の喚起に関する新しい精神生物学的な研究を発展させる、非常に広範で興味深い可能性を開くものである。ここでもう一度、p.213の図7を見ていただければ、この章でふれた多くの研究の深い広がりがわかるだろう。図7は、自律神経系の制御を受ける心と、身体と、身体の各細胞内の分子プロセスとの間の情報変換の完全な経路を示している。この情報変換の経路は、私たちが毎日の生活から得た記憶、学習、行動を状態依存的にコード化することで、無意識のレベルで常に自動的に調整されている。研究と臨床実践を続けることにより、これらの心身プロセスをより意志的に促すさらに広い道が開かれることだろう。
(「精神生物学」p.236-243より引用)






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記事更新日:2024/07/18

“Missoku" - a unique breathing method practiced by the Japanese people since old times.

Missoku is a unique breathing method that has been practiced by Japanese for a long time and is still practiced today in the fields of traditional arts and martial arts. The most characteristic feature of Missoku is the posture when exhaling, in which the breath is exhaled with the belly stretched out. This is different from the commonly practiced abdominal or chest breathing, as well as from the reverse compound breathing practiced in yoga and other forms of breathing. Japanese people have naturally practiced Missoku in their natural environment and living conditions.


Simply speaking, Missoku is a deep breathing technique in which one assumes a hunched posture (with the pelvis tilted back), the belly is kept slightly protruding during inhalation and exhalation, and no force is applied anywhere, without moving the body. By using the deep muscles instead of the outer muscles and by moving only the diaphragm up and down, this breathing method allows for a large amount of exhalation and inhalation at one time, allowing the body to remain stable and quiet, and the mind to focus and feel free and liberated at the same time.


着物の女性



The reason why Japanese people have come to learn this unique breathing method is thought to be related to the unique natural, working, and living conditions in Japan. Japan is mountainous, with steep slopes, soft soil and abundant vegetation, which combined to make it difficult to stand without lowering the waist and bending the knees. In addition, in paddy field work of rice cultivation, there was constant foot and leg stooping, and the hips and upper body had to move in unison. For this reason, the pelvis was tilted backward, and by working in this posture, the legs and hips were trained to be strong. In addition to that, the daily living environment of the floor (tatami) culture, in which sitting and standing postures were commonplace, and the natural posture wearing the kimono obi, which is tied around the hip bones and secures the lower abdomen, also contributed to the development of the unique posture and physicality of the Japanese people. This posture is the basis for Missoku. Once this posture has been established and one has learned this breathing method, it can be maintained and strengthened in the daily environment. Over the centuries, a way of life made possible by strong muscular strength was slowly perfected.

Thus, due to the unique climate and lifestyle, the Japanese have acquired a body with a lowered center of gravity and an excellent sense of center. This breathing method, which is always performed by a posture with the pelvis tilted back and the strength of the legs, hips and abdomen, has cultivated a sensitivity to perceive oneself and one's surroundings in a state of "serenity”. In this tranquil world, the spirit is calmed and the senses are sharpened to the point of acuity, allowing one to perceive even the smallest changes. This Japanese posture and the senses produced by the astonishing stillness of Missoku were reflected in the unique culture of Japan.

 

(References)

Akikazu Nakamura, The body changes with "Missoku", Shincho-Sensho


着物の女性



「密息」〜日本人が古来より自然に行ってきた呼吸法〜

「密息」は、近代以前の日本人がずっと行ってきた、そして現代でも伝統芸能や武術の場で継承されている呼吸法です。密息の一番の特徴は吐く時の姿勢であり、腹を張り出したまま息を吐きます。これは、一般的に行われている腹式呼吸や胸式呼吸とも、ヨガなどで行われる逆複式呼吸とも違う特徴です。日本人は、この呼吸を日本の自然環境や生活環境の中で自然に行ってきました。


密息を簡単にいえば、腰を落とし(骨盤を後ろに倒し)た姿勢を取り、腹は吸うときも吐くときもやや張り出したまま保ち、どこにも力を入れず、身体を動かすことなく行う、深い呼吸です。外側の筋肉ではなく深層筋を用い、横隔膜だけを上下することによって行うこの呼吸法では、一度の呼気量・吸気量が非常に大きくなり、身体は安定性と静かさを保つことができ、精神面では集中力が高まり、同時に自由な解放感を感じます。

日本人が、この密息という独特の呼吸法を身に着けるようになった要因には、日本独特の自然環境、労働環境、生活環境といった諸条件が関係していると考えられます。日本は国土に山地が多いため傾斜がきつく、土質が柔らかく、草木が多いなどの条件が重なって足場が悪いことから、腰を落としひざを曲げなければ立っていることすら難しい環境がありました。また、稲作が始まってからの水田作業では、足腰を踏ん張る姿勢が不断にあり、腰と上体の動きを一体にしなければなりませんでした。このため、骨盤を後ろに倒し、その姿勢で活動することによって、足腰は強靭に鍛えられていきました。さらに、生活環境として、床(畳)文化で、座る姿勢、そこから立つ動作が日常的であったこと、着物の帯は腰骨を巻くように結び、下腹を固定する姿勢が自然だったことも、日本人が固有の姿勢と身体性を獲得する要因となりました。帯を内側から腹でぐっと押し、その間に着物を挟むようにすれば着崩れなくなりますが、これは密息の基本となる姿勢に他なりません。こうして姿勢ができ、密息をするようになると、日常の環境の中でそれが維持され、強化されます。強い筋力を持って可能になる生活様式が、何世紀もの間にゆっくり完成されていきました。

このように、固有の風土と生活習慣によって、日本人は重心が落ち、中心感覚に優れた身体を獲得しました。この、常に骨盤を倒した姿勢と脚・腰・腹の強さによって行う「密息」という呼吸は、自分自身も周囲をも「静けさ」のうちに捉える感性を培ってきました。静謐な世界では、精神は沈静化し、感覚が鋭敏に研ぎ澄まされ、小さな変化を捉えることができるようになります。この日本人の姿勢と密息の驚異的な静止感から生み出される感覚が、日本固有の文化に反映されていきました。

 

〈参考文献〉

「密息」で身体が変わる (新潮選書)
中村 明一
新潮社
2006-05-24

 


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記事更新日:2024/07/14

「密息」〜日本人が古来より自然に行ってきた呼吸法〜

「密息」は、近代以前の日本人がずっと行ってきた、そして現代でも伝統芸能や武術の場で継承されている呼吸法です。密息の一番の特徴は吐く時の姿勢であり、腹を張り出したまま息を吐きます。これは、一般的に行われている腹式呼吸や胸式呼吸とも、ヨガなどで行われる逆複式呼吸とも違う特徴です。日本人は、この呼吸を日本の自然環境や生活環境の中で自然に行ってきました。


密息を簡単にいえば、腰を落とし(骨盤を後ろに倒し)た姿勢を取り、腹は吸うときも吐くときもやや張り出したまま保ち、どこにも力を入れず、身体を動かすことなく行う、深い呼吸です。外側の筋肉ではなく深層筋を用い、横隔膜だけを上下することによって行うこの呼吸法では、一度の呼気量・吸気量が非常に大きくなり、身体は安定性と静かさを保つことができ、精神面では集中力が高まり、同時に自由な解放感を感じます。


着物の女性


日本人が、この密息という独特の呼吸法を身に着けるようになった要因には、日本独特の自然環境、労働環境、生活環境といった諸条件が関係していると考えられます。日本は国土に山地が多いため傾斜がきつく、土質が柔らかく、草木が多いなどの条件が重なって足場が悪いことから、腰を落としひざを曲げなければ立っていることすら難しい環境がありました。また、稲作が始まってからの水田作業では、足腰を踏ん張る姿勢が不断にあり、腰と上体の動きを一体にしなければなりませんでした。このため、骨盤を後ろに倒し、その姿勢で活動することによって、足腰は強靭に鍛えられていきました。さらに、生活環境として、床(畳)文化で、座る姿勢、そこから立つ動作が日常的であったこと、着物の帯は腰骨を巻くように結び、下腹を固定する姿勢が自然だったことも、日本人が固有の姿勢と身体性を獲得する要因となりました。帯を内側から腹でぐっと押し、その間に着物を挟むようにすれば着崩れなくなりますが、これは密息の基本となる姿勢に他なりません。こうして姿勢ができ、密息をするようになると、日常の環境の中でそれが維持され、強化されます。強い筋力を持って可能になる生活様式が、何世紀もの間にゆっくり完成されていきました。

このように、固有の風土と生活習慣によって、日本人は重心が落ち、中心感覚に優れた身体を獲得しました。この、常に骨盤を倒した姿勢と脚・腰・腹の強さによって行う「密息」という呼吸は、自分自身も周囲をも「静けさ」のうちに捉える感性を培ってきました。静謐な世界では、精神は沈静化し、感覚が鋭敏に研ぎ澄まされ、小さな変化を捉えることができるようになります。この日本人の姿勢と密息の驚異的な静止感から生み出される感覚が、日本固有の文化に反映されていきました。

着物の女性

 

〈参考文献〉

「密息」で身体が変わる (新潮選書)
中村 明一
新潮社
2006-05-24

 


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記事更新日:2024/07/14

Japanese unique breathing method "Missoku"

The body that has changed through Missoku※ becomes a very sensitive “receiver'' for external elements. As a result, hearing sensitivity also increases

 

Different from abdominal breathing and thoracic breathing, Missoku is a breathing method unique to Japanese born from Japanese climate and living environment since old times. This is a breathing technique in which the pelvis is tilted backwards, the abdomen is inflated, and only the diaphragm is moved up and down. It has had an influence that cannot be overlooked not only on the lifestyle of the Japanese people, but also on the formation of traditional Japanese art and culture.

  

In the West, where people usually breathe abdominally, the main elements of music are pitch, temporal position and volume, and overtones have been considered a secondary element. In other words, there was a hierarchy of the constituent elements of music. The idea that rhythm, melody and harmony are the three elements of music, originates from this rational basis. However, as the sensitivity of the "receiver" increases by Missoku, and every element begin to be received without discrimination, the hierarchy is removed and delicate parts such as overtones begin to appear. All elements are received equally as if they were arranged on the same plane. As what is received becomes diverse, what is communicated from the recipient will naturally change as well. Similarly, the music changes. This is how Hogaku (Japanese traditional music) was born.


雅楽の楽器


 

Furthermore, it is noteworthy that, because of this breathing method called Missoku, the importance of the “blank” part increased. When people breathe from their abdomen or chest, their bodies move and make some noise, For that reason, the "pauses" of phrases such as songs are filled with impure sounds caused by body movements. In the case of Missoku, the body does not move and make any sounds, so impurities do not appear at all. There's not even any sign of it. The difference between the two breathing methods is, like the difference between ink on newspaper and ink on white Japanese paper like snow. The beginnings, breaks and pauses of sounds become clearer. And people's consciousness is focused on that part. Furthermore, the value of each sound itself, which only shows its face among the impurities and was not identified, becomes apparent. Its appearance resembles the stones in the rock garden of Ryoanji-temple, or the islands floating in the sea of Matsushima-bay.


石庭



 

Next, looking at Missoku from a visual point of view, as the body stabilizes due to this breathing method, people’s eyes also become very stable. And visual sensitivity also increases. When people breathe from their abdomen or chest, their bodies move up and down, making it difficult to see the horizontal lines, but when people practice Missoku, their bodies stop moving up and down, so the horizontal lines become more visible. The horizontal line is said to represent stability, stillness etc., and the sense of tranquility increases.

 

If there is less body movement, the clarity of the screen will also increase. It is because it takes almost no time to focus. It's like fixing a camera on a tripod. In this case, it is possible to move from a small screen far away to a large screen nearby in an instant. I call this effect "focus in/out." On the other hand, in the case of abdominal breathing, breathing moves the body, so shifting your focus during this movement inevitably takes time. It’s like holding a camera in your hand and moving the focus. Even if the image finally comes into focus, it takes time and the screen (field of vision) often becomes blurry. However, in the case of Missoku, this "focus in/out" effect makes the viewpoint movement time extremely shorten.

 

In this way, Missoku makes it possible to integrate hearing and vision, time and space into stillness. This leads to the culture of “Ma (interval or pause)” in Japan.

 

I believe that most of Japan's traditional culture was born out of this breathing method called Missoku. When both the performer and the audience practice this breathing method, even the most subtle expressions become powerful ones for them. I think that there is no country in the world where the “culture of stillness'' has flourished and deepened in this way.

 

References

Akikazu Nakamura, OvertonesSoundLanguageNote of Bodily Culture, Shunjusha, November 1, 2010, pp.85-88.


茶道





日本人の特殊な呼吸法「密息」

密息(みっそく)を行うことで変化した身体は、外的な要素に対して、非常に感度の高い《受信機》になります。そうすると、聴覚における感度も高まります。

腹式呼吸で生活している西洋では、音楽においては、音の高さ、時間的位置、音量などの要素が主で、倍音は副次的な要素と考えられてきました。いわば、音楽の構成要素に階級があったのです。リズム、メロディ、ハーモニーを音楽の三要素とする考え方は、こういったところから出てきました。ところが、密息により《受信機》の感度が高まり、すべての要素が差別なく受信できるようになると、階級は取り払われ、倍音などの繊細な部分が立ち現れます。すべての要素が平面に並んだものとして、平等に受信されるのです。受信されたものが変われば、送信されるものも変わります。そして音楽も変わってきます。このようにして成立したのが邦楽(日本の古来の音楽)です。

さらに、この密息という呼吸法により、《空白》の部分の重要性が高まりました。腹式呼吸や胸式呼吸の場合、身体が動き、多少の音がします。そこで、歌などのフレーズの「間」が、身体の動きによる音の夾雑物(きょうざつぶつ)で埋まってしまいます。密息の場合は、身体も動かず音もしないので、まったくといってよいほど夾雑物は現れません。気配がまったくないといってよいほどです。その差は、たとえて言えば、新聞紙の上に墨を置いた場合と、雪白な半紙の上に墨を置いた場合の違いです。音の出始め、切れ目、間が際立ってきます。そしてその部分に意識が注がれます。さらに、夾雑物の中から顔を出しているだけではわからなかった、ひとつひとつの音自体の価値が現れてきます。それはあたかも、龍安寺(りょうあんじ)の石庭の石、松島の海に浮かぶ島々のようです。

次に、視覚の面については、密息により身体が安定することで、視線も非常に安定したものとなります。そして視覚的な感度も高まります。腹式呼吸や胸式呼吸のときには、身体が上下に動きますので、横の線が見えにくくなりますが、密息を行うと、身体の上下の動きがなくなりますので、横の線が浮き上がってきます。横の線と静けさは共感覚と言われていて、静けさも際立っていきます。

身体の動きがないと、画面の明瞭度も高まります。その上、焦点を合わせるのにほとんど時間がかかりません。それはカメラを三脚に固定したようなものです。遠くの小さい画面から近くの広い画面にまで、一瞬のうちに移動することが可能です。私は、この効果を「フォーカスイン/アウト」と名づけています。腹式呼吸の場合は、呼吸によって身体が動くので、その動きの中で焦点を移動させると、必然的に時間がかかります。カメラを手に持って、焦点を移動させるようなものです。最終的にある程度焦点は合ったとしても、時間がかかり、画面(視界)がややぼやけます。しかし、密息の場合は、この「フォーカスイン/アウト」効果により、視点の移動時間が極めて短くなります。

こうして、密息によって、聴覚と視覚、時間と空間とを、静けさの中に統合することが可能になります。これが《間(ま)》という文化につながっていきます。

日本の伝統文化の多くは、この密息という呼吸法の中から生まれてきたと私は考えています。演奏家も、観客・聴衆も、この呼吸法をしている場では、きわめて微妙な表現も、強く訴える表現となります。世界的に見ても、「静の文化」がこれほど花開き深まった国はないといってよいと思います。
(中村明一著「倍音 音・ことば・身体の文化誌」p.85-88より)


倍音 音・ことば・身体の文化誌
中村 明一
春秋社
2010-11-01




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記事更新日:2024/07/13

日本人の特殊な呼吸法「密息」

密息(みっそく)を行うことで変化した身体は、外的な要素に対して、非常に感度の高い《受信機》になります。そうすると、聴覚における感度も高まります。

腹式呼吸で生活している西洋では、音楽においては、音の高さ、時間的位置、音量などの要素が主で、倍音は副次的な要素と考えられてきました。いわば、音楽の構成要素に階級があったのです。リズム、メロディ、ハーモニーを音楽の三要素とする考え方は、こういったところから出てきました。ところが、密息により《受信機》の感度が高まり、すべての要素が差別なく受信できるようになると、階級は取り払われ、倍音などの繊細な部分が立ち現れます。すべての要素が平面に並んだものとして、平等に受信されるのです。受信されたものが変われば、送信されるものも変わります。そして音楽も変わってきます。このようにして成立したのが邦楽(日本の古来の音楽)です。


雅楽の楽器



さらに、この密息という呼吸法により、《空白》の部分の重要性が高まりました。腹式呼吸や胸式呼吸の場合、身体が動き、多少の音がします。そこで、歌などのフレーズの「間」が、身体の動きによる音の夾雑物(きょうざつぶつ)で埋まってしまいます。密息の場合は、身体も動かず音もしないので、まったくといってよいほど夾雑物は現れません。気配がまったくないといってよいほどです。その差は、たとえて言えば、新聞紙の上に墨を置いた場合と、雪白な半紙の上に墨を置いた場合の違いです。音の出始め、切れ目、間が際立ってきます。そしてその部分に意識が注がれます。さらに、夾雑物の中から顔を出しているだけではわからなかった、ひとつひとつの音自体の価値が現れてきます。それはあたかも、龍安寺(りょうあんじ)の石庭の石、松島の海に浮かぶ島々のようです。


石庭



次に、視覚の面については、密息により身体が安定することで、視線も非常に安定したものとなります。そして視覚的な感度も高まります。腹式呼吸や胸式呼吸のときには、身体が上下に動きますので、横の線が見えにくくなりますが、密息を行うと、身体の上下の動きがなくなりますので、横の線が浮き上がってきます。横の線と静けさは共感覚と言われていて、静けさも際立っていきます。

身体の動きがないと、画面の明瞭度も高まります。その上、焦点を合わせるのにほとんど時間がかかりません。それはカメラを三脚に固定したようなものです。遠くの小さい画面から近くの広い画面にまで、一瞬のうちに移動することが可能です。私は、この効果を「フォーカスイン/アウト」と名づけています。腹式呼吸の場合は、呼吸によって身体が動くので、その動きの中で焦点を移動させると、必然的に時間がかかります。カメラを手に持って、焦点を移動させるようなものです。最終的にある程度焦点は合ったとしても、時間がかかり、画面(視界)がややぼやけます。しかし、密息の場合は、この「フォーカスイン/アウト」効果により、視点の移動時間が極めて短くなります。

こうして、密息によって、聴覚と視覚、時間と空間とを、静けさの中に統合することが可能になります。これが《間(ま)》という文化につながっていきます。

日本の伝統文化の多くは、この密息という呼吸法の中から生まれてきたと私は考えています。演奏家も、観客・聴衆も、この呼吸法をしている場では、きわめて微妙な表現も、強く訴える表現となります。世界的に見ても、「静の文化」がこれほど花開き深まった国はないといってよいと思います。
(中村明一著「倍音 音・ことば・身体の文化誌」p.85-88より)


茶道



倍音 音・ことば・身体の文化誌
中村 明一
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2010-11-01




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The art of conscious breathing

The art of breathing has long been practiced in Budo [Japanese martial arts] and meditation, where the specific kind of breathing, conscious breathing, has always been valued. In fact, how you breathe influences your state tremendously. From a physiological perspective, breathing under normal conditions is performed as an unconscious working of the autonomic nerve, but you can do it consciously as well.

 

When you breathe in, your sympathetic nervous system is stimulated and you feel energized; when you breathe out, your parasympathetic nervous system is stimulated and you relax. Breathing in consciously and slowly stimulates your parasympathetic nervous system, helping your body and mind relax. Through a prolonged process of conscious breathing, your state changes and high performance will be achieved.



瞑想



意識的に呼吸をするということ

呼吸は、古くから武道や瞑想などに取り入れられています。そこでは、意識的に呼吸をするということを大切にしてきました。実際に、呼吸をどのように行うかによって、自分自身のステートは大きく変わります。生理学的に見ると、呼吸というのは通常、自律神経の働きによって無意識に行っているものですが、それを意識的に行うことも可能です。

息を吸うときは交感神経が刺激されて気持ちが高まり、息を吐くときは副交感神経が刺激されてリラックスします。息を意識的にゆっくりと吸うことと、吸う時間を長くすることで、副交感神経が刺激されて、心身がリラックスしていきます。この呼吸のプロセスを長く続けることによって、ステートが変化し、ハイパフォーマンスを発揮することができるようになります。


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意識的に呼吸をするということ

呼吸は、古くから武道や瞑想などに取り入れられています。そこでは、意識的に呼吸をするということを大切にしてきました。実際に、呼吸をどのように行うかによって、自分自身のステートは大きく変わります。生理学的に見ると、呼吸というのは通常、自律神経の働きによって無意識に行っているものですが、それを意識的に行うことも可能です。

息を吸うときは交感神経が刺激されて気持ちが高まり、息を吐くときは副交感神経が刺激されてリラックスします。息を意識的にゆっくりと吸うことと、吸う時間を長くすることで、副交感神経が刺激されて、心身がリラックスしていきます。この呼吸のプロセスを長く続けることによって、ステートが変化し、ハイパフォーマンスを発揮することができるようになります。


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